「夏休み砂浜開放」をふりかえる座談会

「夏休み砂浜開放」をふりかえる座談会のアイキャッチ画像です。水色の背景に、イベント告知のようなデザインが配置された画像です。左側に縦書きで「座談会」とあり、出演者名として「音楽家 おぐりまいか」「ダンサー おかだゆみ」と書かれています。中央うえには、床に座る2人と青い布状の作品、青白柄のクッションが写った写真があり、右下には大きな窓のある室内スペースや天井の布飾りが写った写真が組み合わされています。下部に「『夏休み砂浜開放』をふりかえる」というタイトル文が大きく入っています。

—―—みなとコモンズの空間だからこそ生まれていたこと、感じたことはありましたか?

小栗
昨今、大きな音を出していい場所や、思いきり走り回れる場所って、実はほとんどないですよね。子どもたちの、のびのびとしている姿を見ていると、日頃窮屈に感じているものを発散したいようにも見えて、そのエネルギーに触れられたのも、いい経験になりました。同時に、この空間以外にもそういう場所があってほしいとも思いました。

おかだ
普段からちょっとずつ抑え込んでいるんだろうなという爆発的なものを、感じたりする瞬間もありました。この空間は壁がなく、見通しがいいので、 都会の小さな建物や学校とは違って、体が勝手に開放されていく感じがしました。子どもたちは、結構ずっとぐるぐると走り続けていて、 「目的を失っても、走り続ける経験」って、実はすごく大事なのかもしれないなとも思いました(笑)。

「夏休み砂浜開放」の開場写真

日替わりワークショップについて

 —―—お二人は毎日、日替わりでワークショップを実施していました。おかださんがダンス、小栗さんが音楽を担当しながら、お互いのワークショップにも参加しあっていたかと思いますが、新たに気づいたことはありましたか?

おかだ
ワークショップを子供たちに乗っ取られるスリルが半端なかったです(笑)。

 —―—今回はワークショップをする空間と、ただ過ごしに来た人の空間が同じだったことに難しさがありましたよね。多くの場合、ワークショップはそれだけのための空間になりますが、ここでは、ワークショップがあると思っていない子も同じ場所にいて、過ごしている。

小栗
その中で突然ワークショップが始まるので、参加している子どもたちの興味があちこちに飛んでいくんです。

おかだ
乗っ取られると、どこで戻そうか、どこまで進むのか、そのままにするのか、引き戻すのかを考えます。私はその中で、小栗さんの振る舞いにすごく影響を受けました。ワークショップの参加者に対して、「正解を出さない」「ゴールを決めない」「よくわからないままでもいい」という態度でいて、ただ、そのわからなさに好奇心をもって向き合えるような仕掛けをしていた。その漂い方は、小栗さんの普段の音楽表現にも通じていると思います。

小栗
ワークショップを子どもたちに、「乗っ取られる」こともありましたが、それを乗っ取り返しながら進めていく自由なワークショップでした。

おかだ
ワークショップって、どうしてもアーティストのエゴが入るんですよね。「こういう振る舞いが生まれてほしい」という意図がところどころ入り込む。参加者はその空気を読んで、自分を当てはめてしまう場合もあります。もちろん目的がなければ成立しないんですが、そこにはいつも矛盾を感じます。やっぱり、その矛盾をぶち破っていくことで、その人の表現が立ち上がってくるとも思うので。「乗っ取られる」ことこそが自由で、その人自身の表現が生まれている瞬間だと捉えるならば、すごくいいことですよね。アーティストのエゴを超えるスリルはありますが、すごくいい時間でもあって、こちらも試されます。

私はもともと、「先生と生徒」という構図に対して、少しプレッシャーがあります。ワークショップも、どうしてもそういう構図になりがちですよね。
子どもたちがプレッシャーを感じないように、途中参加・途中退出OKのワークショップにしていました。最初から参加すると「最後までやらなきゃいけないのかな」「成果を出さなきゃいけないのかな」と思ってしまう子もいるかもしれないし、逆に、何をやっているのか様子を見てから入りたい子もいると思ったんです。

小栗
私も今回のワークショップでは、最初に子どもたちの気分を聞いて、内容の順番や場所を変えたりもしていました。大人だけの場合、なかなかやらないことですよね。それができたのは、ファシリテーターの一人が場を管理するのではなく、おかださんをはじめ、ほかの見守りスタッフも混じりながら参加してくれていたのが、とても大きかったです。

 —―—ダンス×音楽で実施した、お二人のコラボレーションワークショップについても聞かせてください。

小栗
『楽器かもしれない』というワークショップを一緒に進行しました。楽器を普通の弾き方にとらわれず、いろいろな音の出し方を探す内容だったのですが、おかださんは、私が普段やっているアプローチとはまったく違う提案をしてくれていました。私は楽器の特徴を見て、言葉にして書くところから始めたのですが、おかださんは、例えば頭を使って音を鳴らすなど、ダンサーならではの身体の使い方を提示してくれて、とても新鮮でした。

私自身、音楽をするとき、楽器を弾くときには、必ず身体がついてくるという意識があるので、身体の取り扱いについて一緒に考えられる存在としておかださんがいてくれたのは、すごく心強かったです。

おかだ
私はその逆バージョンですね。一緒にやった『音色キャッチボール』で、音をボールとして捉えて追いかけるという発想が、とても面白かったですし、小栗さんが誰よりも走っていたのが衝撃的でした。子どもたちにも全然負けていなかった。

普段、身体について考えていると、どうしてもロジカルな方向に行ってしまって、身体が置いてきぼりになりがちなんです。でも小栗さんは、音に対する時差がないんですよね、音に対して自然に動いていて、それを体現している。小栗さんの方が身体表現をしてるじゃんと思ってしまいました(笑)。

写真中央左から、小栗さん、おかださん

写真中央:おかださん、写真右:小栗さん