「夏休み砂浜開放」をふりかえる座談会
みなと芸術センター開館準備室が入っている旧三田図書館の3階には、砂浜をイメージしたスペース「みなとコモンズ」があります。夏休みのあいだ、この場所を小学生から18歳までが自由に過ごせる“居場所”として開く「夏休み砂浜開放」1を実施しました。宿題をしたり、自由に走り回ったり、工作に夢中になったり。それぞれが思い思いの時間を過ごす空間のなかで、ダンスや音楽、レゴ®ブロックの日替わりワークショップ2も行いました。
今回の座談会では、日替わりワークショップを担当しながら期間中、子どもたちとたくさんの時間を過ごしたダンサーのおかだゆみさん、音楽家の小栗舞花さんにお話を伺いました。ワークショップの「教える/教わる」という関係を越え、空間を共にした3週間。遊びと表現の境界がゆるやかに溶け合うなかで見えてきたことを、お二人にふりかえっていただきました。
さりげなく隣にいることから始まった一か月
—―—それではまず、「夏休み砂浜開放」の企画内容を聞いたとき、そして初日を迎えたときの心境について教えてください。
小栗舞花さん(以下敬称略)
これまで、子どもたちと関わる経験がほとんどなかったので、楽しみな気持ちと同時に、正直不安もありました。初日は、おかださんや見守りスタッフのみなさんが子どもに慣れている様子を、少し後ろから見ながら「私はどう過ごせばいいんだろう」と考えていました。
おかだゆみさん(以下敬称略)
私も同じです。普段から子どもと活動しているわけではないので、かなり戸惑いました。「自分がこれまでやってきたことを壊さなきゃいけないのかな、何ができるんだろう」と、考えたりしてました。でも、初日の会場はまだ何もない、ただの「場」で、「これはもう流れに身を任せるしかないな」と思って、時間の流れに委ねることにしました。
—―—初日は大人も子どもも、少し緊張していた印象があります。どのように距離感を縮めていきましたか。
小栗
大人の緊張って、子どもにすぐ伝わりますよね。だから無理に「仲良くしよう」とするより、「最初から一緒にいましたけど?」みたいな距離感が一番よかった。本当に、ただ一緒にいることから始める。その方が結果的に、仲良くなれる気がしました。さりげなく隣にいる、同じことをしている。それだけで、自然に関係が生まれていく感じがしました。
おかだ
大人が作った肩書をいったん取り払って、一人の人間として場に漂う、という感じですね。子どもがわがままをいうなら、こっちも言ってみる。疲れたら「疲れたよ」と伝える。「私はお昼寝が好きなんだよね」とも言っていました(笑)。そうした主張も含めて、同じ空間に一人の人間としているようにしていました。

遊びから延長していくクリエイティビティ
—―—今回の企画には「表現やアートは、実は日常の些細なことから始まる」ということを子どもたちに伝えたいという目的もありました。お二人の普段の実践とも重なる部分があるかと思いますが、いかがでしょうか。
おかだ
私は絵も工作も得意ではなくて、いわゆる「美術のスキル」がほとんどないんです。その代わり、相手を観察して、感情を読み取ろうとすることが、自分の創作の起点になっています。今回も、まずは子どもたちの遊びをじっと見ていました。つみきを壊したい衝動、風船と戯れたい気持ち、さまざまなごっこ遊びの中に、一人ひとりの欲求や願望がちゃんと現れているんですよね。
小栗
めちゃくちゃ同意します。どういう衝動でその道具を選んで、どう扱うのか。そこって、すごくクリエイティブな部分ですよね。私は今回『なんでも音楽になっちゃう部屋』3というワークショップをやってみました。実際に子どもたちは、様々な楽器を前にして「演奏する」というより、音を出すことそのものに夢中になる様子が印象的でした。
ワークショップが終わってからも、自分たちから、楽器を鳴らしながら鬼ごっこをはじめたり、砂浜の舞台を使ってライブをしたり、鼓笛隊のようなことをしていたり。あれはもう、立派な表現だと思います。楽器を使って、「曲をうまく弾かなきゃ!」とか「良い曲を作らなきゃ!」ということではない時間を過ごしてくれたのが、すごくうれしかった。子どもたちは自分たちでルールを作りながら、次々に遊びを発明していました。
おかだ
3階に広がる砂浜が、ある種、舞台セットのような役割を果たしていて、子どもたちがそこで、ずっと一つの「劇」を作り続けているようにも見えました。改めて、演劇はごっこ遊びの延長なんだなとも思ったり。
小栗
風船のイルカの寝床や、お墓を一緒に作ったりもしましたね(笑)。


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- 日常の何気ない動きや音を手がかりに、普段の時間の過ごし方を「音楽」として捉え直すワークショップ。対話やゲームを通して、自分や他者の過ごし方がどのように音楽へと変わるのかを体験しました。 ↩︎
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